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ePRO(electric Patient-reported-outcome)とは
ePRO(イープロ)とは、「electronic Patient Reported Outcome」の略で、日本語では「電子的患者報告アウトカム」と訳されます。
治験・臨床研究に参加いただく患者さん・被験者さんからのデータ(PRO)は、従来は「紙」で集めていましたが、ePROでは、スマートフォンのアプリなどからデータを集めることができます。
この記事では、ePROとは何か、従来の方法との違いやメリットについてご紹介します。
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目次[非表示]
- 1.ePRO(electronic Patient Reported Outcome)とは
- 2.ePRO活用のメリット
- 2.1.治験依頼者や治験実施施設にとって
- 2.2.患者さんにとって
- 3.ePRO活用の課題点
- 3.1.導入コストがかかる
- 3.2.運用に手間がかかる
- 3.3.ITスキル・知識が不足
- 4.まとめ
ePRO(electronic Patient Reported Outcome)とは
ePROとは、「electronic Patient Reported Outcome」の略で、スマートフォンなどを使ってPRO(Patient Reported Outcome)データを集めることです。そもそも、PROデータとはどのようなものでしょうか?
PRO(Patient Reported Outcome)とは
PROとは、「Patient Reported Outcome」の略で、日本語では「患者報告アウトカム」と訳されます。治験では、医師による評価や検査の数値など、さまざまなデータを集めて、薬剤などの有効性・安全性を確認します。その中で近年は、患者さんによる主観的な評価も重要視されるようになり、これをPRO(患者報告アウトカム)と呼びます。
患者さんの主観的な評価が重要視されるようになった背景には、慢性的な疾患の増加などによって、アドヒアランスなど、患者さんの治療への積極的な参加がより重要になったことが挙げられます。
■関連資料
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PROデータは、これまで紙媒体で運用されており、これを「ePRO」と区別するために、紙(paper)の頭文字をとって「pPRO」と呼びます。
ePROとは
ePROは、スマートフォンなどを使ってPRO(Patient Reported Outcome)データを集めることをいいます。具体的には、患者さんがお持ちのスマートフォンに専用のアプリをインストールしてもらい、定期的に届く質問に回答してもらう方法などがあります。他にも、あらかじめアプリがインストールされたスマートフォンやタブレット端末を患者さんに貸出して回答してもらうケースや、専用のアプリを利用せずにWebサイトから直接回答してもらう方法などさまざまなパターンがあります。
国内ではSNSの「LINE」を利用している方が多いため、LINEアカウントを活用して、定期的に患者さんへの質問・回答やリマインドを行うなどの方法もあります。患者さんにとって、自身のスマートフォンなどに専用のアプリをインストールする必要がないことや、普段からLINEアプリの使い方に慣れていることなどから、ePROを導入しやすいメリットがあります。
ePRO活用のメリット
ePROを活用すると、製薬企業などの治験依頼者や、医療機関などの治験実施施設、治験に参加する患者さんにとって、それぞれどのようなメリットがあるのでしょうか?
紙媒体を利用する場合(pPRO)と比較した場合のメリットをいくつかあげてみましょう。
治験依頼者や治験実施施設にとって
-
紙の質問票の作成・保管・配送が不要に
人件費・印刷費・配送費の削減につながり、冊子の保管場所も不要です。また、紙の紛失といったリスクを低減することができます。 -
紙媒体をデータ化するための入力作業が不要に
入力やチェックにかかる時間を大幅に短縮でき、人件費の削減にもつながります。 -
データの集計や管理が容易に
紙の質問票では、患者さんの記入漏れがある場合などに、再度記入をお願いするなどのやり取りが発生する場合もありますが、ePROの場合は未入力の項目があった場合にエラー表記が出る機能などを使うことができます。 -
服薬状況や体調の確認、リマインドなどの電話対応の削減に
これまで患者さん一人ひとりに対して電話で行っていた服薬状況などの確認が、Webサイトやアプリ上でできるため、時間や人件費の削減につながります。 -
データの質の担保に
患者さんがいつ回答を送信したか、正確なデータ入力日時の確認が可能なため、PROデータの質の担保につながります。
このほかにも、リアルタイムにデータを確認できることから、重大な副作用が疑われる場合、より早期に確認・対応できるなどのメリットもあります。
患者さんにとって
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紙に記入する手間や、郵送などの手間を軽減できる
ePROはスマートフォンなどで完結するため、紙の質問票に手書きで回答しポストに投函するなどの手間を軽減できます -
紙の紛失リスク低減
来院時に医療機関などでの紙の受け渡しや、郵送でのやり取りが必要なため、紙を紛失してしまうリスクを低減できます -
いつでも手軽に入力しやすい
スマートフォンやアプリで完結するため、時間や場所を選ばず、気が付いたときにすぐに入力できます -
リマインドや通知が届く
質問がアプリに届くと、スマートフォンの通知ですぐに気付くことができ、未回答の場合はリマインドが届くなど、回答が必要なタイミングがわかり利便性向上につながります。
このほかにも、患者さんが来院時に医師などに伝えにくい主観的な評価を直接集めることができるなど、pPRO, ePROの形式にかかわらず得られるメリットもあります。
ePRO活用の課題点
製薬企業などの治験依頼者や、医療機関などの治験実施施設、治験に参加する患者さんにとって、それぞれにメリットのあるePROですが、今後の普及に向けてどのような課題があるのでしょうか?
治験依頼者にとっては、以下のような課題が考えられます。
導入コストがかかる
ePROを利用するためのシステム構築など、導入にかかる初期費用が課題となることがあります。システムの選定・導入のコストのほか、専用のアプリを開発したり、患者さんに貸与するためのスマートフォンなどを用意したりなど、導入コストが高額になる場合もあります。
運用に手間がかかる
ePROは、紙での運用(pPRO)に比べてメリットも多くありますが、スマートフォンやアプリの操作に慣れていない方からのお問い合わせ対応や、IT・セキュリティ関連のメンテナンスが発生するなど、運用に手間がかかる場合もあります。
ITスキル・知識が不足
これまで利用していないシステムのため、担当者のITスキルや知識不足のために導入が難しい場合もあります。治験にかかわる情報のため、万が一、情報漏えいなどにつながることがないか、セキュリティ面は特に重要です。システム業者だけではなく、治験依頼者の企業・担当者にも一定のITスキルが求められるため、スキル・知識の習得が課題となることがあります。
また、医療機関などの治験実施施設や、治験に参加する患者さんにとっても、スマートフォンやアプリの操作が難しい・抵抗があるなどの課題が考えられます。それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるかを検討し、必要なシステムやツールを選択することが大切です。
まとめ
ePROとは、「electronic Patient Reported Outcome」の略で、スマートフォンなどを使ってPRO(Patient Reported Outcome)データを集めることです。PRO(患者報告アウトカム)は、患者さんからの主観的評価を集めることで、患者さんの治療への積極的な参加がより重要になった近年、活用されることが増えてきました。
従来のように紙媒体でPROデータを集めることと比較して、ePROを利用することで、治験依頼者・実施医療機関・患者さんのそれぞれにとって、時間や手間の削減などのメリットが多くあります。
比較的新しい概念やシステムのため、導入に際しては費用やIT・セキュリティ面の課題もありますが、「患者さんの主観的な評価を反映する」取組みとして、今後さらに普及が進む可能性があります。
シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社(CHI) は、SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)として、全国4,000以上の医療機関と提携し、20年以上にわたり各医療機関を支援してまいりました。
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