治験における「記録」とは|GCPレター第1号
■この記事は、2014年4月14日に発行されたGCPレターを転記したものです。
■参考資料
→GCPレター第01号(2014年4月14日発行)
■GCPレターとは:臨床試験全体の質の向上とGCPの啓発活動の一環として、当社提携医療機関向けのGCP関連などのレターを2021年3月まで発行いたしました。
この記事では、治験で求められる「記録」について解説します。当たり前の内容ですので「今さら何だ」と思われるかもしれません。また既に日頃から実践されている方には退屈な内容だと思いますが、昨今、治験依頼者や規制当局からの記録に対する要求も高まっておりますので、是非ご一読いただき、治験だけでなく日常診療にも生かしていただければ幸いです。
■参考資料
→GCPレター第01号(2014年4月14日発行)
目次[非表示]
- 1.記録とは
- 2.診療録に求められる要件
- 2.1.ALCOA(アルコア)
- 3.ワークシートの功罪
- 4.まとめ
記録とは
まずは「記録」の定義ですが、記録管理の国際基準であるISO15489における定義を紹介します。なおISO(アイソ、イソ、アイエスオーなどと読みます)とは国際標準化機構(International Organization for Standardization)のことで、工業分野の国際規格を策定する組織です。
ISO15489における「記録」の定義
法的な責任の履行、又は業務処理における、証拠及び情報として、組織、又は
個人が作成、取得及び維持する情報
これだけでは具体的にどうしたら良いのかよく分かりませんね。
それでは診療録に求められる要件について、具体的に考えてみましょう。
診療録に求められる要件
診療録の記録方法については医師法、健康保険法などで定められており、また厚生労働省による解説(保険診療の理解のために)に記載されておりますので、それらのうち今回のテーマに合致する部分を抜粋いたしました。
○診療をしたときは、遅滞なく診療に関する次の事項を診療録に記載しなければならない
- 診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢
- 病名及び主要症状
- 治療方法(処方及び処置)
- 診療の年月日
○責任の所在を明確にするため、署名を記載の都度必ず行う
○5年間保存しなければならない
また診療録を訂正する場合には、元の記載内容を判読できる状態で訂正し、訂正箇所に次の情報を付記することが必要です。
- 訂正者
- 内容
- 訂正日
- 訂正理由
これらは電子的に診療録を作成する場合も同様です。
ALCOA(アルコア)に似ているとお気づきの方も多いと思います。実はALCOAの考え方は、以前から国内において求められている記録方法と基本的に変わりがありません。しかし非常に残念なのですが、治験の記録=ALCOA⇒『面倒だ!』と誤解されてしまう場合もあるようです。
ALCOA(アルコア)
- Attributable:記録者が明確である
- Legible:判読可能である
- Contemporaneous:速やかに記録する
- Original:オリジナルな記録である
- Accurate:正確である
ワークシートの功罪
治験においては、治験特有の検査や評価を行うため、診療録とは別にワークシートを活用することがあります。ワークシートには、実施しなければならない項目を見落としたり忘れたりしないようにするメリットがあり、またワークシートに治験の情報が集約されているため、他者によるチェックが容易であるということもあります。
一方で、バイタルサインや有害事象などが診療録とワークシートの両方に記録される(どちらがオリジナルな記録?)こともあるため、記録間に不整合が生じることが懸念されます。
そのような場合には、予め何を診療録に記録し、何をワークシートに記録するかを取り決めておくことが大切です。仮に診療録とワークシートの両者に記録する必要がある場合には、どちらがオリジナルな記録であるのか、併せて取り決めることも必要です。
まとめ
- 「記録」には明確な要件(記録者・訂正者の明確化、判読可能、オリジナルなど)があり、それらを遵守する必要がある
- 予め記録する事項と媒体を決めておくことが推奨される
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■関連資料
→SSIカンパニー・SMO事業|シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)