治験に係る保険外併用療養費(その1)|GCPレター第20号
■この記事は、2016年3月31日に発行されたGCPレターを転記したものです。
■GCPレターとは:臨床試験全体の質の向上とGCPの啓発活動の一環として、当社提携医療機関向けのGCP関連などのレターを2021年3月まで発行いたしました。
■参考資料
→GCPレター第20号(2016年3月31日発行)治験に係る保険外併用療養費~その①~
■参考資料
→GCPレター第21号(2016年4月28日発行)治験に係る保険外併用療養費~その②~
2回の記事に分けて、「治験に係る保険外併用療養費」について解説します。
健康保険法は一連の診療中に保険診療と保険外診療を混在させることを禁止していますが、昭和59年に導入された特定療養費制度により、高度先進医療、差額ベッド、前歯部の金合金歯冠等について保険診療と混在させることが認められ、また平成8年には
薬事法(現:医薬品医療機器等法)に規定される治験が本制度に組入れられました。また平成18年の健康保険法改正等により特定療養費制度は平成18年9月30日に廃止され、平成18年10月1日に「保険外併用療養費」制度が導入されました。
■関連記事
→治験に係る保険外併用療養費(その2)|シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)
目次[非表示]
- 1.保険外併用療養費の支給対象となる保険外診療の種類
- 2.保険外併用療養費 支給対象外経費
- 3.消費税
- 4.包括化点数
- 5.DPC
- 6.費用請求
- 7.地方厚生局長への報告
- 8.まとめ
保険外併用療養費の支給対象となる保険外診療の種類
保険外併用療養費の支給対象となる保険外診療は、保険導入を前提とした新たな技術である評価療養、患者が選定する選定療養及び患者申出療養に分類され、治験は評価療養に組入れられています。
評価療養
評価療養とは、将来の保険導入のための評価を前提とする新たな技術等を指します。具体的には、
- 先進医療
- 医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療
- 薬価基準収載前の承認医薬品の投与(最大90日)
- 保険適用前の承認医療機器及び再生医療等製品の使用(最大240日)
- 薬価基準に収載されている医薬品、保険適用した医療機器及び再生医療等製品の適用外使用(厚生労働大臣が認める条件及び期間)
選定療養
選定療養とは、療養環境の提供等、患者の選定によるもの等を指します。
- 特別の療養環境の提供(差額ベッド)、予約診療、時間外診療、200床以上の病院/特定機能病院/一般病床が500床以上の地域医療支援病院の紹介なしの患者の初診、200床以上の病院/特定機能病院/一般病床が500床以上の地域医療支援病院の再診(紹介を行う旨、申し入れた場合)、制限回数を超える医療行為、180日を超える入院、前歯部の鋳造歯冠修復に使用する金合金・白金加金、金属床による総義歯、う蝕の継続的な指導管理
なお第Ⅰ相治験では健康人を対象とするため保険を用いず、当たり前ですが本制度の適用外です。また製造販売後臨床試験については治験と同様にGCPが適用されますが、本制度は適用されません。
保険外併用療養費 支給対象外経費
医師主導治験、医療機器治験などで取扱いが異なりますので、ここからは主に治験依頼者から依頼された医薬品の治験について記載します。
治験期間中の検査料、画像診断料、被験薬の予定される効能・効果と同様の効能・効果を有する医薬品の投薬及び注射に係る費用(4項目)は、保険外併用療養費の支給対象ではなく、治験依頼者が負担します。ここでいう「治験期間」とは治験薬等の投与を開始した日から終了した日までの期間です(観察期にプラセボ等を投与する場合は、その期間を含む)。また検査、画像診断については、治験期間中であれば、治験とは無関係の疾患(他科含む)に対するものも治験依頼者の負担です。
初診料、再診料、処置料、手術料、治験薬と同種・同効ではない投薬・注射の費用、・・・ |
検査、画像診断、治験薬と同種・同効薬の投薬・注射の費用 |
|
保険給付分 |
被検者の一部負担分 |
保険外費用(治験依頼者負担分) |
消費税
保険外併用療養費(保険請求)については、消費税は「非課税」です。保険外費用では、評価療養は「非課税」、選定療養は「課税」ですが、被保険者(患者)以外から徴収する費用は「課税」として取り扱われます。従って、医薬品の治験において、被保険者以外(治験依頼者)が負担する費用は「課税」の対象です。
包括化点数
診療報酬が包括化されている場合は、当該包括点数から保険外併用療養費の支給対象とならない項目(4項目)のうち、当該包括点数に包括されている項目の点数を差し引いた点数が保険外併用療養費の支給対象です。
DPC
治験の被験者の医療費は治験実施施設がDPC対象病院であるか否かに係わらず出来高支払いであり、治験の実施が決定した日(同意取得日)から出来高で算定し、4項目については治験依頼者に請求します。また治験終了後も引き続き出来高で算定するため、治験中及び治験終了後の被験者の費用負担が増える可能性があります。なお当該被験者が一旦退院して再度同じ病院に入院した場合には、一連の診療と判断される場合には出来高により算定します。
費用請求
保険請求の場合は、レセプトの「特記事項コード」に「11」(薬治)、「症状詳記区分コード」に「50」、「症状詳記区分コメント」に以下の内容(治験概要)を記録します。治験概要を記録する目的は、審査の際に治験期間と被験薬の同種・同効薬を特定出来るようにするためです。
- 治験概要:治験依頼者の氏名及び連絡先、治験薬等の名称及び予定される効能効果、当該患者に対する治験実施期間、「企業依頼」
治験依頼者に請求する場合は請求書、被験者毎の明細書等を作成し請求します。その際に治験を特定するために、上記の治験概要などの添付を求められる場合もあります。
地方厚生局長への報告
保険外併用療養費の支給対象となる治験を実施した保険医療機関は、毎年の定例報告の際に治験の実施状況(以下の項目)について地方厚生局長に報告することが義務付けられています。
治験の実施状況報告の項目:
- 治験依頼者名
- 治験薬の名称及び効能効果
- 治験薬の種類(内服薬、注射薬、外用薬の別)
- 区分(第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相の別)
- 対象患者数
- 治験実施期間
まとめ
治験に係る保険外併用療養費について、支給対象となる保険外診療の種類など、主に治験依頼者から依頼された医薬品の治験について解説いたしました。
「治験に係る保険外併用療養費~その2~」では、治験依頼者から依頼された医薬品の治験と医師主導治験等との違いについて解説していますので、あわせてご覧ください。
シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社(CHI) は、SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)として、全国4,000以上の医療機関と提携し、20年以上にわたり各医療機関を支援してまいりました。
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