スタートアップミーティングとは|GCPレター第29号
■この記事は、2017年2月28日に発行されたGCPレターを転記したものです。
■関連資料
→GCPレター第29号(2017年2月28日発行)スタートアップミーティング
■GCPレターとは:臨床試験全体の質の向上とGCPの啓発活動の一環として、当社提携医療機関向けのGCP関連などのレターを2021年3月まで発行いたしました。
治験は、治験責任医師一人で実施できるものではありません。治験分担医師、治験コーディネーター、治験薬管理者、看護師、臨床検査技師、医事課担当者等の医療関連スタッフの協力が必要です。
治験を適正かつ適切に実施するためには、治験が開始される前に治験に係わる医療機関の関係者が研修やトレーニングを通して、GCPや治験薬・治験実施画書等の内容について十分に理解することが重要であり、GCPでは以下のとおり規定されています。
(GCP省令第1条ガイダンス2(8))( ICH-GCP2 .8)
治験の実施に関与する者は、教育、訓練及び経験により、その業務を十分に遂行しうる要件を満たしていること
このトレーニングの一つとして、スタートアップミーティング( キックオフミーティングともいいます) があげられます。今回は、スタートアップミーティングについて考えてゆきましょう。
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スタートアップミーティングの目的
スタートアップミーティングを開催する目的として以下が考えられます。また、開催時期としては、治験開始直前( 治験契約後̃被験者登録開始前)がより効果的です。スタートアップミーティングには、治験責任医師、治験分担医師及び治験依頼者だけでなく、治験に係わるすべての医療機関関係者が参加することが望まれます。すべての関係者が集合することで、情報共有だけでなく、問題点や疑問点の検討も可能であり、効果的な連携作りに大変有用です。
【スタートアップミーティングの目的】
医療機関関係者の治験実施に対する意識向上
- 治験依頼者と医療機関関係者間のコミュニケーション向上
- 医療機関関係者内のコミュニケーション向上
- 治験実施計画書に関する理解向上
- 治験実施手順の確認
- 治験業務の役割分担の明確化
スタートアップミーティングでの確認事項
スタートアップミーティングでは、下記事項について説明及び確認( 質疑応答) を行います。また、スタートアップミーティング終了後には、速やかに議事録を作成し、医療機関関係者内で情報を共有しましょう。
治験薬の概要 |
治験依頼者より、治験薬の特徴、投与方法などについて説明 |
治験実施計画書の内容 |
目標症例数、治験実施期間や来院回数、試験スケジュールと許容範囲、併用禁止・併用注意薬など、治験実施計画書の内容を確認 |
役割分担 |
各部署・各人の業務内容と役割分担を確認 |
被験者来院時の流れ |
被験者が来院してから帰宅するまでの流れを確認 |
検査上の注意事項 |
院内で実施する検査の有無、集中測定検査機関への検体提出手順、データ提出方法などを確認 |
治験薬の処方・管理 |
治験薬処方の手順、治験薬の保管・管理、治験薬の回収の方法などを確認 |
原資料の特定 記録に関する注意事項 |
原資料からEDC入力への流れ、原資料に求められる基本要素(ALCOA+CC EA)などを確認 |
緊急時、重篤な有害事象 発生時の報告体制・対応 |
有害事象/ 重篤な有害事象の定義、報告や連絡の期限、手順など |
治験の中止時の手順 |
治験を中止しなければならないケース、中止時の手順など |
記録の保存 |
治験記録は通常診療で医療機関が保管すべき期間( 診療録5 年保存など) よりも長期間になることについて注意喚起する |
保険外併用療養費 |
保険外併用療養費の範囲及びその他の費用に係わることを確認 |
その他の取り決め |
被験者募集の方法など、当該治験に関する取り決め事項を確認 |
スタートアップミーティングに使用する説明資料の例
役割分担に関する資料の例
記録の保存に関する資料の例
スタートアップミーティング実施の記録
スタートアップミーティングは、医療機関関係者が情報を共有する機会の場ですが、治験薬や実施手順等の理解を深めるトレーニングの場でもあります。そのため、治験依頼者が医療機関関係者のトレーニング実施記録として、スタートアップミーティング参加者に署名を求める場合が増えています。
また、スタートアップミーティングに参加した者のみが治験業務を実施できると規定している試験もあります。スタートアップミーティング開催後は、参加者リストを含む実施記録を作成し、使用した資料とともに保管すると良いでしょう。
スタートアップミーティングをより効果的にするために・・・
スタートアップミーティングで治験責任医師より、医療機関関係者に治験の意義を説明し、協力を要請することにより、関係者が医療機関全体で治験を実施しようという意識を持ち、治験遂行に対するモチベーションの向上、チームワークの向上を期待できます。
また、スタートアップミーティングをより効果的にするために、以下を実行してはいかがでしょうか。
スタートアップミーティング参加前に事前確認
スタートアップミーティングに参加する前に、各自が治験実施計画書や説明文書により治験の概要を把握し、疑問点や確認すべき事項を整理したうえで、スタートアップミーティングに参加しましょう。
スタートアップミーティング時にシミュレーションを実施
治験薬や治験実施計画書等の解説を聞くだけでなく、被験者のスクリーニングから同意取得を経て治験を実施し、治験が終了するまでの対応をロールプレイしましょう。それにより生じる問題点やリスクを抽出することができ、逸脱の発生を未然に防ぐことができると考えられます。
治験実施中も、適宜、情報共有
治験開始後に問題が発生した場合には、関係者内で情報共有し、検討・改善していくことが重要です。また、人事異動等で関係者が変更した際には、速やかに必要事項の周知を図り、情報を共有しましょう。開始後も関係者間で連絡を密にし、情報共有することが治験を円滑に進めるためには、効果的です。
シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社(CHI) は、SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)として、全国4,000以上の医療機関と提携し、20年以上にわたり各医療機関を支援してまいりました。
これまでの知見・経験を活かし、治験・臨床研究の実施から事務的業務、IRB(治験審査委員会)事務局業務まで、医療機関における治験実施をフルサポートいたします。
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■関連資料
→SSIカンパニー・SMO事業|シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)