治験における被験者募集|GCPレター第26号
■この記事は、2016年10月31日に発行されたGCPレターを転記したものです。
■関連資料
→GCPレター第26号(2016年10月31日発行)治験における被験者募集
■GCPレターとは:
臨床試験全体の質の向上とGCPの啓発活動の一環として、当社提携医療機関向けのGCP関連などのレターを2021年3月まで発行いたしました。
治験責任医師は、「目標とする被験者数」について治験依頼者と合意し、合意した募集期間内に必要数の適格な被験者数を集める責任があります。( GCP省令第42条ガイダンス5)
目標とする被験者数の組入れを速やかに達成することは、治験を完遂し、新しいくすりや治療法を速やかに患者の元に届けることに繋がります。
今回は、被験者募集の具体的な方法やその留意点について考えてゆきましょう。
目次[非表示]
- 1.被験者登録を計画通りに進めるためには・・・
- 1.1.十分な人数の被験者候補を集める
- 1.2.被験者候補の理解を深める
- 1.3.同意取得後のスクリーニング脱落を最小限にする
- 2.実施医療機関内での被験者募集の工夫
- 2.1.院内掲示用ポスターの掲示、パンフレットの配置
- 2.2.他科からの紹介
- 2.3.実施医療機関のホームページなどのウェブサイトの活用
- 2.4.治験に関する案内文書の送付
- 2.5.院内に治験に関する問合せ窓口( 治験コールセンター) を設置
- 3.実施医療機関外での被験者募集の工夫
- 3.1.他の医療機関への紹介依頼
- 3.2.市民公開講座
- 3.3.近隣施設( 公民館等) へのポスターの掲示、パンフレットの配置
- 4.被験者募集のための情報提供の内容は薬機法、医療法等の関連法令に従う必要があります
被験者登録を計画通りに進めるためには・・・
十分な人数の被験者候補を集める
- 治験実施計画書を十分に理解し、被験者候補をリストアップする
- リストアップした患者の背景や特徴を把握し、登録可能な患者を選定する
- 他科・他院からの紹介患者を被験者候補として想定する場合には、紹介元医師からの適切な患者数を見積もる
被験者候補の理解を深める
患者が治験のことをよく理解したうえで参加を検討できるようにすることが重要です
- わかり易い説明文書・補助資料を作成し、患者の不安を解消する
- 口頭でわかり易く説明できるように事前に練習する
- 治験参加に伴う患者の負担を軽減する工夫をする
同意取得後のスクリーニング脱落を最小限にする
スクリーニング期の検査結果等が除外基準に抵触する症例が相次ぎ、事前の想定よりも登録可能な患者が少なくなることがあります
- 過去のデータなどから組み入れ基準を十分に満たすことが想定される被験者候補を抽出する
上記対応をしてもなお、治験内容や対象疾患によっては、被験者登録が進まない場合があります
次に掲げる工夫を試してみてはいかがでしょうか
なお、治験の被験者募集を目的とした情報提供はIR B 審査が必要です
( G C P 省令第3 2 条第1 項第2 号)
実施医療機関内での被験者募集の工夫
院内掲示用ポスターの掲示、パンフレットの配置
- 院内の目につきやすい場所、患者の待ち合い場所にポスターを掲示し、パンフレットを配置する
- 分かりやすく美しい視覚的資料を作成する
- 選択・除外基準を簡潔に記載し、治験の被験者になり得るかどうかをイメージしやすくする等
他科からの紹介
- 他科に候補患者がいる場合、該当する診療科へ被験者紹介の協力を要請する
- 他科からの被験者候補の受診がスムーズに進むよう、事前に院内での連絡体制を整える等
実施医療機関のホームページなどのウェブサイトの活用
- 実施医療機関のホームページに被験者募集の案内を載せる
- 実施医療機関のホームページだけでなく、治験責任医師等のブログやSNSなどを活用する等
治験に関する案内文書の送付
- 信頼関係が構築されている患者のうち、治験の候補となり得ると考えられる方に対して、該当する治験の内容について案内の文書を送付する等
院内に治験に関する問合せ窓口( 治験コールセンター) を設置
- 治験に関する問い合わせ窓口として専用の電話番号を設置する等
■関連ページ
→治験コンタクトセンター|シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)
実施医療機関外での被験者募集の工夫
他の医療機関への紹介依頼
- 関連病院や近隣のクリニックへレターや電子メール等を用いて患者紹介を依頼する
- 関連病院や近隣のクリニックに被験者募集ポスター掲示やパンフレットの配置を依頼する等
- 治験依頼者の秘密情報の開示を伴う可能性があるため、必ず事前に治験依頼者に確認する
- 提供する情報の内容によっては、実施医療機関と紹介依頼をする医療機関との間で秘密保持契約を要することがある
■関連ページ
→被験者募集サービス|シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)
市民公開講座
- 治験に関連した疾患について、病態、診断、治療、予防を分かりやすく解説する
- 治験についての話をする旨を事前に通知することが望ましい
- 希望者には対象疾患の簡易検査を会場で行い、疾患や治験についての知識を深めてもらう等
近隣施設( 公民館等) へのポスターの掲示、パンフレットの配置
近隣の公民館、市民センターなどに、治験に関するポスター掲示やパンフレットの配置を依頼し、
より多くの人たちに情報配信する等
実施医療機関が主体となって行う上記以外に、治験依頼者が主体となって行う被験者募集には以下のものがあります。
治験依頼者が主体となって行う被験者募集
-
メディア
新聞広告、新聞折り込みチラシ、雑誌、テレビ
- 治験依頼者のウェブサイト
- 治験関連サイトでの紹介
被験者募集のための情報提供の内容は薬機法、医療法等の関連法令に従う必要があります
院内掲示用ポスター、パンフレットやウェブサイトなどへの記載内容等は、薬機法、医療法等の関連法令に従う必要があります。以下に示す内容は「治験に係わる被験者募集のための情報提供要領」( 日本製薬工業協会: 平成2 0 年1 1 月改訂版) に分かりやすく記載されています。
情報提供内容 |
適否 |
|
治験薬の名称( 治験記号を含む) |
× |
医療機関が実施する場合は〇 |
治験薬の効能または効果 |
△ |
効果を暗示させる表現をしない 悪い例: ○ ○ の疾患に効果あり/ △ △ の症状を改善する等 |
治験薬の用法または用量 |
○ |
|
対象疾患名および症状名 |
○ |
|
対象基準 |
○ |
|
治験目的 |
○ |
簡潔で分かりやすい表現をする |
治験内容 |
○ |
|
被験者負担軽減 |
○ |
負担が軽減する内容、負担が軽減される金額の記載が可能 |
実施医療機関/診療科/責任医師 |
○ |
IRBで審査され、院長の承認を得た上で問い合わせに対応することができれば記載が可能 |
治験依頼者名 |
○ |
|
募集期間 |
○ |
|
問い合わせ先 |
○ |
いつ、どこに、どのような方法で問い合わせすることが可能かを表示する |
治験の被験者募集を目的とした情報提供はIRB審査が必要ですが、提供する情報内容、量、提供先での使用方法によっては、必ずしもIRB 審査が必要ではないことがあります。一律に判断することが難しいため、治験ごとに適宜、治験依頼者、治験責任医師等関係者で方向性を相談して進めていきましょう。
< 参考資料( 治験119( 製薬協) ) >
- 質問番号: 2 0 0 8 -3 1 治験審査委員会による被験者紹介依頼状審査の必要性
- 質問番号: 2 0 1 2 -4 7 治験審査委員会による被験者紹介依頼電子メール審査の必要性
- 質問番号: 2 0 1 4 -4 3 他院治験の被験者募集ポスターに対する自院治験審査委員会の審査
シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社(CHI) は、SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)として、全国4,000以上の医療機関と提携し、20年以上にわたり各医療機関を支援してまいりました。
これまでの知見・経験を活かし、治験・臨床研究の実施から事務的業務、IRB(治験審査委員会)事務局業務まで、医療機関における治験実施をフルサポートいたします。
CHIの被験者募集サービスでは、臨床試験の症例集積のために、疾患やプロトコールの選択/除外基準、ロケーションなどに応じて個別に被験者募集プランを策定し、実行・管理までワンストップでサービスを提供いたします。複数PRO(Patient Recruitment Organization)の全体マネジメントを行うことにより、被験者候補の二重登録防止にも繋がります。
まずはお気軽にお問い合わせください。
■関連ページ
→被験者募集サービス|シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)
■関連ページ
→被験者募集プラン例|シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)
■関連ページ
→リファーラルサイト活用による被験者募集|シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI)