治験における有害事象発生時の対応|GCPレター第25号
■この記事は、2016年9月30日に発行されたGCPレターを転記したものです。
■参考資料
→GCPレター第25号(2016年9月30日発行)有害事象発生時の対応
■GCPレターとは:臨床試験全体の質の向上とGCPの啓発活動の一環として、当社提携医療機関向けのGCP関連などのレターを2021年3月まで発行いたしました。
治験実施中に有害事象が発生した際には、被験者の安全性を確保するとともに、GCP省令第48条(治験中の副作用等報告)に沿った速やかな対応が必要です。
有害事象発生時に冷静に対応できるように、治験実施医療機関内であらかじめ手順を定めておくことが大切です。
この記事では、有害事象発生時の対応について詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.有害事象とは
- 2.重篤な有害事象の報告(GCP省令第48条)
- 2.1.被験者保護のため
- 2.2.規制当局への報告のため
- 2.3.実施計画書の再検討のため(事象内容による)
- 3.有害事象発生時の対応
- 3.1.適切な処置
- 3.2.治験中止・継続の医学的判断
- 3.3.重篤度に応じた報告(GCP省令第48条)
- 3.3.1.重篤な有害事象
- 4.有害事象の記録
有害事象とは
有害事象とは、「治験使用薬又は製造販売後臨床試験使用薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくない又は意図しない疾病又はその徴候(臨床検査値の異常を含む)をいい、当該治験使用薬又は当該製造販売後臨床試験使用薬との因果関係の有無は問わない」と定義されます(GCP省令第2条ガイダンス24)。
有害事象のうち、因果関係を否定できないものを副作用といいます。治験使用薬投与前の観察期間中に発現した事象は有害事象の定義から外れますが、有害事象と同様に報告を求める実施計画書もあり、その場合には実施計画書に従って情報収集する必要があります。
なお、有害事象のうち、下記を重篤な有害事象といい、その他の有害事象とは取扱いをわけています。
重篤な有害事象の定義 |
治験使用薬との因果関係判断のポイント |
有害事象のうち、以下のいずれか1つ以上に該当する事象
|
(GCP省令第2条ガイダンス18(10))
|
重篤な有害事象の報告(GCP省令第48条)
重篤な有害事象が発生した場合、治験責任医師は、実施医療機関の長および治験依頼者に直ちに報告しなければなりません。
被験者保護のため
- 実施医療機関の長は、IRBに意見を聴き、治験の継続の可否について判断する必要があります。
- その他の被験者や他施設の被験者の安全性にも影響を及ぼすと考えられた場合、治験依頼者は早急にすべての治験実施医療機関に情報提供をする必要があり、また、すべての治験責任医師は、提供された当該情報を基に、被験者の治験継続の医師に影響する可能性の有無(同意説明文書の改訂の要否)を判断します。
規制当局への報告のため
治験依頼者は、規制当局へ安全性情報報告を下記期限内に実施する義務があります。
- 未知/死亡・死亡につながるおそれのある症例:7日以内
- 未知/その他の重篤な症例:15日以内
- 既知/死亡・死亡につながるおそれのある症例:15日以内
実施計画書の再検討のため(事象内容による)
発生した重篤な有害事象を速やかに報告することは、被験者の安全性の確保に繋がります。
有害事象発生時の対応
適切な処置
被験者の治験参加期間中及びその後を通じて発生した有害事象に関して被験者にその旨を伝え、適切な医療を実施する(GCP省令第45条)
治験中止・継続の医学的判断
発生した有害事象に対して医学的に評価し治験中止または継続の判断をする
- カルテ等への記録
- 重篤度に応じた適切な報告
- 因果関係の特定
- 被験者への説明(医学的に継続可能な場合は意思確認も)
- 補償の対応(必要に応じて)
- 回復までの追跡調査(原則として)
重篤度に応じた報告(GCP省令第48条)
重篤な有害事象
- 『速報』の提出
- 『詳細報』の提出
- IRB審査(GCP省令第31条第2項)
重篤な有害事象に関する報告書は、IRB審査が必要です
有害事象の記録
有害事象の評価は医学的判断を伴うため、治験責任医師等が有害事象に該当するか否かの判断を行い、記録します。
治験で求められる有害事象の報告事項には、
- 有害事象名
- 発現日
- 回復日
- 重症度(Grade)
- 治療内容
- 治験使用薬との因果関係
- 転帰
・・・など、通常の診療行為においては、医師が記録しない内容が含まれます。
そのため、必要な情報がカルテなどに記録されていないケースが見受けられます。治験責任医師等は、「治験で求められる記録」について十分理解して、正確な情報の収集・記録を心がける必要があります。
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