治験における保険外併用療養費制度|GCPレター第52号
■この記事は、2019年5月31日に発行されたGCPレターを転記したものです。
■GCPレターとは:臨床試験全体の質の向上とGCPの啓発活動の一環として、当社提携医療機関向けのGCP関連などのレターを2021年3月まで発行いたしました。
■参考資料
→GCPレター第52号(2019年5月31日発行)治験における保険外併用療養費制度
一連の診療中に保険診療と保険外診療が混在することを混合診療と呼びます。
通常、混合診療では全額患者負担になりますが、厚生労働大臣が定めた場合に限り、保険外診療の併用が認められ、この制度を「保険外併用療養費制度」といいます。
この記事では、混合診療とは何か、基本的な用語の解説から、保険外併用療養費制度について詳しく見ていきましょう。
■関連記事
→治験に係る保険外併用療養費(その1)
■関連記事
→治験に係る保険外併用療養費(その2)
目次[非表示]
- 1.保険診療と保険外診療の併用(混合診療)
- 2.保険外併用療養費制度
- 2.1.混合診療と保険外併用療養費制度
- 2.1.1.通常の混合診療
- 2.1.2.保険外併用療養費制度
- 2.2.治験の場合
- 3.治験における保険外併用療養費制度
- 3.1.依頼者負担と保険給付の内訳(医薬品)
- 3.1.1.通常の診療
- 3.1.2.企業治験
- 3.1.2.1.依頼者が負担する費用
- 3.1.3.医師主導治験
- 3.2.保険外併用療養費制度が適用される期間
- 3.3.保険外併用療養費制度が適用される範囲
- 4.まとめ
保険診療と保険外診療の併用(混合診療)
一連の診療中に公的医療保険が適用される診療行為(保険診療)と、公的医療保険が適用されない診療行為(自由診療=保険外診療)を併用することを、混合診療といいます。
日本では、混合診療を原則禁止しており、混合診療を行った場合には、全額保険外診療扱い(全額患者負担)となります。
混合診療に対する厚生労働省の基本的考え方
■ 混合診療を無制限に導入した場合
- 本来は、保険診療により一定の自己負担額において必要な医療が提供されるにもかかわらず、患者に対して保険外の負担を求めることが一般化
→患者の負担が不当に拡大するおそれ -
安全性、有効性等が確認されていない医療が保険診療と併せ実施されてしまう
→科学的根拠のない特殊な医療の実施を助長するおそれ
■ 一定のルールの設定が不可欠
■ 混合診療の禁止ルールの例外措置を法律で規定「保険外併用療養費制度」
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/heiyou.html )
保険外併用療養費制度
通常、混合診療では全額患者負担になりますが、厚生労働大臣が定めた場合に限り、保険外診療の併用が認められることとなりました(健康保険法 第63条(療養の給付)。
これを「保険外併用療養費制度」といいます。
混合診療と保険外併用療養費制度
通常の混合診療
保険外併用療養費制度
治験の場合
治験における保険外併用療養費制度
依頼者負担と保険給付の内訳(医薬品)
治験(医薬品)における費用負担については以下のとおりです。
医療機器および再生医療等製品の治験は、医薬品と少し異なります。
通常の診療
保険給付: |
基本診療料 |
検査 |
画像診断 |
投薬 |
注射 |
処置・手術・麻酔等 |
|
患者負担: |
基本診療料 |
検査 |
画像診断 |
投薬 |
注射 |
処置・手術・麻酔等 |
企業治験
依頼者負担: |
基本診療料 |
検査 |
画像診断 |
投薬(同種同効薬) |
投薬 |
注射(同種同効薬) |
注射 |
処置・手術・麻酔等 |
治験薬 |
||
保険給付: |
|||||||||||
患者負担: |
基本診療料 |
投薬 |
注射 |
処置・手術・麻酔等 |
依頼者が負担する費用
「治験実施期間」における・・・
- 全ての検査料、画像診断料*
- 被験薬の予定される効能・効果と同様の効能・効果を有する医薬品(同種同効薬)の投薬および注射に係る費用
- 治験薬
*治験実施期間中であれば、治験とは無関係の疾病(他科に付属するものも含む)に係る検査、画像診断(検査・画像診断に使用される薬剤を含む)の費用も依頼者負担となります。
医師主導治験
研究者負担: |
基本診療料 |
投薬 |
画像診断 |
投薬 |
注射 |
処置・手術・麻酔等 |
治験薬 |
|
保険給付: |
||||||||
患者負担: |
基本診療料 |
投薬 |
画像診断 |
投薬 |
注射 |
処置・手術・麻酔等 |
※治験薬は、自ら治験を実施する者もしくは治験薬提供者が負担
医師主導治験では、平成28年4月より、同種同効薬(投薬・注射)の費用も保険外併用療養費の支給の対象となりました。抗がん剤などでは、複数の同種同効薬を同時に投与することが多く、治験薬を使うと同種同効薬も保険から外れてしまうということで、医療機関あるいは患者さんの負担が非常に重い状況でしたが、これにより、負担が解消されました。
保険外併用療養費制度が適用される期間
保険外併用療養費制度が適用される期間に関し、平成9年1月31日厚生労働省保険局医療課事務連絡「治験に係る診療の特定療養費化について」では、治験における保険外併用療養費制度が適用される期間を「治験実施期間」とし、『治験薬の投与開始日から投与終了日までの期間であり、治験薬等を投与していない前観察期間や後観察期間は含まれない』と定めています。
したがって、治験薬等を投与していない前観察期間や後観察期間は保険診療となります。
なお、医療機器及び再生医療等製品の治験では、適用期間が少し異なります。
保険外併用療養費制度が適用される範囲
保険外併用療養費制度が適用される治験は、以下の通りです。
- 第Ⅰ相(患者対象)
- 第Ⅱ相、長期投与試験
- 第Ⅲ相、長期投与試験(承認まで)
- 追加試験(指示事項回答のため)
製造販売後臨床試験や臨床研究には適用されません。
また、健康人を対象とする治験の場合は、そもそも公的医療保険が適用されないため適用外です。
まとめ
保険外併用療養費制度についてご理解いただけましたでしょうか。
以下の参考資料もあわせてご覧ください。
■参考資料
→GCPレター第20号(2016年3月31日発行)治験に係る保険外併用療養費~その①~
■参考資料
→GCPレター第21号(2016年4月28日発行)治験に係る保険外併用療養費~その②~
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■関連資料
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